インダストリアルピアスについて
当院はピアスの穴開けにも対応しております.
軟骨ピアスの穴開けを中心に承っておりますが,その中でもインダストリアルピアスは定期的にご相談を頂く部位です.
インダストリアルピアスの魅力は,人工物が耳という生体構造を横断する点にあると私は考えています.
ただ装飾が付いているのではなく,長い金属シャフトが曲線的な耳を貫通し,その構造の一部として成立する点に私は美を感じます.
インダストリアルは複数のホールを一本のシャフトで貫くスタイルの総称ですが,ここでは,最も象徴的な「ヘリックス同士を一直線に結ぶタイプ」を取り上げます.

まず,耳の外縁の大きな弧(耳輪 helix)に,金属の直線が割り込み,弧に対する弦となります.
その弦は,内側の隆起(対耳輪 antihelix)に一瞬触れるかのように走り,やがて離れていきます.
その「触れて,離れる」関係が,美しさを生むのでしょう.
この症例では,対耳輪がやや寝ているため,シャフトとの距離が一定に保たれ,触れて離れるというよりは寄り添っている様に見え,全体的に穏やかに見えます.
インダストリアルは,ヘリックス上の2点を結ぶ「一本の直線」を表現します.
しかしその直線は,必ずしも空間的に自由ではありません.
内側の隆起(対耳輪 antihelix)が強い耳では,その直線上にこの対耳輪があり,干渉することがあります.
その場合,デザインを変更する(直線を定義する2点を変更する)必要がある可能性があります.
無理に通せば,金属が軟骨に接触し続ける構造となり,炎症や排除の原因になるでしょう.
逆に,対耳輪の形成が極端に弱い耳では,インダストリアルを開けること自体は可能であっても,インダストリアル特有の”カッコよさ”が出ないことがあります.
これは,Helix-金属シャフト-Antihelixの関係(位置関係・緊張関係)が成立しないためと私は考えます.
インダストリアルは単に二点を結ぶだけのピアスではありません.
耳を構成する諸曲線と工業的人工物(industrial)が,どこで出会い,どこで離れるか——その関係が成立して初めて「構造」として美しく見えると私は考えています.